不動産投資での節税方法

EU離脱でなぜ英不動産投資ファンドは停止したのか?

EU離脱で商業不動産への不透明感が高まった

国民投票によってEUからの離脱派が勝利したのはつい最近のことですが、影響は様々なところに出てきています。イギリスだけでなく日本でも日経平均株価の乱高下が起こりました。たった一日で大きなマイナスを出してしまったかたもおられるかと思います。そして影響は不動産にも及びました。

イギリスの不動産価格が下落したことで不動産ファンドから資金を引き上げる投資家が続出。業界コメンテーターなどは「ロンドンのオフィスは離脱後3年以内に最大で20%値下がりする可能性がある」と警告しています。

一刻も早く資金を引き上げようとする投資家もいると思いますが、一部のファンドでは解約ができないように“解約停止措置”を取るなどしているため、資金を引き上げようにも動けないというかたもおられるようです。

1.取引を停止したファンドはどこか?

7月7日の時点で取引停止となったのは全部で7ファンドとなっています。

  • M&Gインベストメンツ(英資産運用会社)
  • アビバ・インベスターズ(英の保険会社)
  • スタンダード・ライフ・インベストメンツ(英の保険会社)
  • ヘンダーソン・グローバル・インベスターズ(英資産運用会社)
  • コロンビア・スレッドニードル(英資産運用会社)
  • カナダライフ(カナダの生命保険会社)
  • アバディーン・アセット・マネジメント(英資産運用会社)

イギリス国内では再投票を求めるデモが行われており、今後本当に再投票が行われEU残留派が勝利するようなことがあるかもしれません。なかには“政府への抗議”のつもりで離脱に一票を投じたかたもおられるとのことです。

しかし、たとえ本意でなかったとしても国民投票の結果を受けてイギリスの商業不動産への不透明感が高まっていることは事実です。多くの投資家がファンドから資金を引き上げる事態に発展しており、今後さらに影響は広がる恐れもあります。

投資会社ティルニー・ベストインベストのマネジングディレクター、ジェーソン・ホランズ氏は「オープンエンド型ファンドの問題は、パニック売りが始まった時は解約を停止する以外に道がないことだ」と指摘、「現時点ではこれは避けられない展開だ」と述べた。

※引用:bloomberg「英EU離脱でパニック、さらに4社が不動産投資ファンド解約停止」

後述していますが、オープンエンド型の投資信託には大きな問題が起きた時にパニック売りが起こることがあります。アパートやマンションなどの現物不動産投資とくらべて、投資信託は少額で始められるためリスクが低いとは言われますが、突然の自然災害や政治体制の変更など大きな問題が起きた時に売り(解約)が殺到し資金凍結に陥ることもあります。

2.資金の引き出しを停止して違法にならないのか?

EU離脱でなぜ英不動産投資ファンドは停止したのか?

ヘッジファンドが投資家からの資金償還を受け付ける期間内だったとしても、資金の引き出しを求める動きが大きくなるとファンドの運営が困難になる恐れがあります。

今回のEU離脱が正にそうですが、このように償還請求が殺到した場合は「ゲート条項」によって投資家からの資金引き出しを制限できると定められているのです。

ただしゲート条項は無制限に発動できるという訳ではありません。一回の償還期限での資金償還額に上限を設定し、この上限を上回る引き出しは制限することができるようになっています。

2-1.顧客全体を守るために停止しているケースもある

かつては「ファンドが破たんに近い」と判断されるなどから、たとえ短期間の償還停止だとしても異例な事態でしたが、近年では解約の急増などでゲート条項が発動され、制限がかかるケースも増えてきているようです。これはファンドが自らの生き残りを図るためでもありますが、顧客全体を守るために行っている面もあります。

また投資家からの資金償還要求に応えるためには、不動産を売却して現金化しなければならないので時間がかかりますし、高い確率で値下がりが懸念されているわけですから直ぐに買い手が見つかるとも限りません。

3.クローズドエンド型の「REIT」に潜む危険とは?

クローズドエンド型の「REIT」に潜む危険とは?

日本でも不動産ファンドは人気で、よく耳にするのはREIT(リート)などです。

アパートやマンションなどの現物を購入し、家賃収入や売却益を得る“現物不動産投資”とは違い、REITなどの不動産ファンドでは不動産が証券化されているので少額からでも購入できるということ、そして現物を持たないので売却もやすいという“流動性の高さ”などが注目されています。

それぞれにメリット・デメリットはありますが下記で詳しくご紹介しているのでそちらをご参考ください。

3-1.「現物不動産は危険」で「REITは安全」の嘘

証券化されているので流動性が高いとはいっても、不動産は株式や債券と比べると流動性は落ちます。投資家からの解約があったからといって、投資した不動産を素早く売却し現金化することは難しいでしょう。

売買とは、売り手と買い手の両方がいて成り立つものですから、売却をしようにも買い手が見つからないという問題もでてきます。

もしもアパートやマンションなどであれば一般投資家が買えるようなものも多いのですが、REITでは大型商業施設などへ投資することになるので、流動性が高いとは言えないのです。

「現物不動産は危険」で「REITはリスクが低い」と言われることもありますが、必ずしもそうとは言い切れないのです。

3-2.原則として途中解約はできない

また投資信託には原則として途中で解約できない「クローズド・エンド型」と、いつでも解約できる「オープン・エンド型」とに分類されています。

証券取引所に上場しているREITなどがクローズド・エンド型にあたり、取引所を通じた売却はできますが、原則として満期まで解約や換金はできません。「REITは証券化されているから流動性が高い」といわれるのは、証券取引所に上場することで流動性を確保しているからです。

3-3.価格は株式取引と同じように需要と供給によって変動する

取引所で売却する際の価格は、通常の株式取引と同じように需要と供給によって変動しています。

現物不動産投資は多額のお金が必要になるのでREITにしたほうがよいと単純に考えるのは危険かもしれません。売買タイミングを図る、万が一のときに損切りするなど、株式取引の経験が豊富なかたならスムーズにできるものの、経験がないかたにとっては判断が難しいでしょう。

REITは購入までのハードルが非常に低いですが、保有している間にも値動きをチェックし、経済情勢などにも敏感になって常に売却タイミングを図る必要があります。

その一方で現物不動産は購入するまでに物件探しや契約など多くの労力がかかりますが、取得したあとは管理運営を委託でき、毎月安定した家賃収入を得られるという魅力があります

3-4.安定した利益を出すためには常に成長しなければならない

繰り返しお伝えしたようにREITは投資家からお金を集め、それを元に不動産を取得し、家賃収入などを得たあとは経費を差し引いて残った利益を投資家に分配します。つまり安定した利益を出すにはお金を投資したいと思われるように常に成長しなければなりません

成長できないものは投資家から資金を集めることができず、新たな不動産を取得することが難しくなります。一般の法人と同じように倒産する可能性もあり、もしも倒産となると購入した株式は無価値になります。また上場基準に抵触するなどで上場廃止に陥るようなことになれば流動性は著しく悪くなるでしょう。

もしもイギリスのEU離脱やクーデターなど政治体制の変更、自然災害、金融危機など“非常事態”が起きたときには、事実上の資金凍結に陥る可能性があります。これらは予測することが極めて難しいので、ファンド選びや投資金額などは慎重に判断してください。

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